「妊娠を意識しだしたら“葉酸”を摂りましょう!」といわれますが、なぜでしょうか?胎児の先天異常のリスク回避のためといわれますが、実はそれ以上の効果があることが分かっています。もしなんとなく摂っているとしたら、必要量をしっかり摂って、活かしていきましょう。
葉酸はビタミンB群の一種で代謝に関係し、DNA・RNAやタンパク質の生合成を促進する栄養素。細胞の生産や再生を助けて体の発育に役立ちます。細胞の分裂や成熟にも大きく関わるため、特に胎児にとっては重要な成分です。
「神経管閉鎖障害」という胎児の神経管ができる時(受胎後およそ28日)に上手くつながらない先天性異常があります。多くの場合、妊娠を知るのは神経管ができる時期より遅く、またこの時期に葉酸のサプリメントを摂取することにより、神経管閉鎖障害のリスクが低減することが数多くの研究で明らかになっています。そのため妊娠を計画している方は、葉酸を十分に摂取していることが大切となります。
神経管閉鎖障害のリスク回避のためには、通常の食事に加えて、サプリメントなどで強化される葉酸として 400μg/日摂取することが望まれると日本人の食事摂取基準で示されています。
つまり、妊活中は640μg/日が推奨されていることになります。
ところが、日本人女性にとって日頃摂取量が不足しがちなビタミン・ミネラルとして、葉酸と鉄が挙げられています。つまりいつもの食事での摂取では十分な量を摂りにくく、また日本人の多くが葉酸を効率的に代謝できない遺伝子を持つという研究結果もあり、恒常的に不足しやすいことが分かっています。
そして、プレコンセプションケア(将来の妊娠のための健康管理)として、葉酸が注目されているのは、胎児の先天異常リスク軽減のためばかりではありません。
ノルウェイの大規模コホート研究では、母が妊娠初期から葉酸摂取していると子供の自閉症を40%減らすことができるなど子供の発達にも影響しているという結果や、中国では葉酸サプリメントを6カ月以上摂取していると、6カ月未満に対して産後うつ病が24%低くなるという調査結果も出ています。
妊娠に関しても、デンマークの調査では、葉酸サプリメント摂取なし群に対し、摂取した群が15~20%出生率が向上、ARTの成績も20%程度アップする結果が出ています。
良いことずくめのようですが、過剰摂取は健康障害を引き起こす可能性があるので要注意です。
日本人の葉酸の代謝効率があまりよくないことも合わせて考えると、下表にある耐容上限量900~1000μg/日が妥当だと考えられます。食事で摂るには大変なので、やはりサプリメントをうまく活用した方がよいでしょう。
葉酸のサプリメントは種々あります。含有量をチェックし効果的な摂取をしましょう!